他店施工でエンジンが掛からない
A様(仮名)から、メールにて問合せをいただきました。
”10年ほど前に他店でカーセキュリティを施工したが、施工から1〜2年でセキュリティの調子が悪くなり 近年はエンジンがかからない時がある。 エンジンの始動不良は、時が経つにつれて益々顕著になり、最近では エンジンを始動できないことの方が多い” とのこと。
当店では 他店施工品のアフターフォローはお引き受けしませんが、既設セキュリティを全て撤去して 当店でセキュリティを新規設置するという内容だったので、お引き受けしました。
まずは、グチャグチャの配線を掻き分けながら、既設品を撤去して 純正に近い状態に近づけてから エンジン始動不良の原因を探ります。
(今回 撤去前の写真は載せませんが、グチャグチャに取り付けられた既設品撤去だけでも1日がかりでした)
あちこち調査して、ようやく見つけた断線箇所。
エンジン始動に関係する配線で、ギボシ加工した跡があります。
おそらく前のセキュリティ屋さんが、”切断したけど、やっぱり使わないからギボシで繋いだ” のでしょう。
ギボシやエレクトロタップによる結線は、ディーラーやカー用品店などで 当たり前に行われる結線方法ですが、年数が経つと断線しやすくなります。
配線というのは、ビニール絶縁体を剥いて 銅線を露出させると、芯線である銅が酸化して硬くなります。
硬くなった銅線は、当然 車の振動や揺れによって断線することが予想されます。
一概に ギボシ・エレクトロタップがダメとは言いませんが、あくまでも簡易的な手法であることを念頭において「じゃあ、どうすれば耐久性を確保できるか?」を考えて施工すべきでしょう。
もっとも、それを考える施工者なら 安易な結線方法は採択しないし、まして エンジン始動に関わる配線にギボシを使うこともないのですが ”考えない施工者は とことん考えない” というのは毎度のことです。
【① 半田付け】
まずは 千切れた配線を 半田付けで結線 し、収縮チューブで絶縁します。
これで、ギボシ接続よりはるかに強力になりました。
先述の通り 銅線は空気に触れると酸化しますが、半田付けには 溶接だけでなく メッキ効果もあるので 酸化にも強くなります。
その上で、絶縁被膜によって 配線同士の短絡や空気に触れさせないように保護します。
【② 配線束ね】
半田付けした箇所は 当然強固になります。
ただし、固くなるというのは いいことばかりではありません。
柔軟性を失うと 物質は折れやすくなるので、半田付けした箇所は なるべく動かさないのが鉄則です。
”半田付け” だけで安心し、配線が好き勝手に動くようでは 断線のリスクを回避できません。
他の配線と一緒にハーネステープで束ねることで、施工した配線が単独で動かされることを防止します。
【③ 配線束を固定】
黒いボックス(ヒューズボックス)に、ハーネステープで配線束を固定します。
これで、配線束ごと動かされるリスクは軽減されました。
【④ 結束バンドで固定】
③では、ハーネステープ(ビニールテープとは 似て非なる絶縁テープ)でヒューズボックスに固定しましたが、粘着テープも 年数が経過すると粘着力が衰えます。
今回は ”二度とエンジン始動不良が起きないように” 念の為 結束バンドで追加固定しました。
ちなみに 結束バンドにも ”素材による耐用年数の差” があります。
ざっくり言うと 白色の結束バンドは屋内用で劣化が激しく、黒色の結束バンドは屋外用で高耐久です。
当然、当店では原則 屋外用を使用しますが、中にはエンジンルームなどの劣悪な環境でも屋内用の結束バンドを使う施工者も大勢いるので 数年後にトラブルが起きたりします。
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自動車電装では、たった一ヶ所の施工不良が思わぬ重大トラブルに発展することが多々あります。
特に、カーセキュリティは 車両の核心の部分にまで 加工・施工を行うので、一歩間違えば 重大事故にもつながりかねません。
多くの人は「カーセキュリティは誤報が心配」と言いますが、サイレンが鳴るだけなら 近所迷惑くらいで そう大したことはありません。
むしろ怖いのは 車両の安全性への影響です。
今回のエンジン不始動もそうですが、「カーセキュリティ=エンジンを掛けさせない製品」で不具合や施工不良が起きれば、当然 エンジン始動に悪影響が出ます。
上記の作業で 当初のトラブルは解消されましたが、過去に施工したカーセキュリティ屋さんのちょっとした失敗のせいで、A様は 長年に渡り不具合を抱えながらのカーライフになってしまったようです。
「当店の施工が完璧」とは言いませんが、この作業を行ったのが数年前。
その後 特に不具合の報告やクレームもなく、数年経った今でも 何も問題なく動作しています。
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